図書紹介「いつかの夏」
著者:大崎善生
紹介者:緒方浩二郎
皆様、“名古屋闇サイト殺人事件”をご存知ですか。
“名古屋市千種区の路上で、2007 年 8 月、帰宅途中の会社員磯貝利恵さん(当時 31 歳)が男 3 人に拉致、殺害され、遺体は岐阜県瑞浪市の山林に捨てられた。3 人はインターネットサイト上の「闇の職業安定所」を通じて知り合い、犯行に及んだことから、「闇サイト」が社会問題となった。名古屋地裁は 09 年 3 月、神田司、堀慶末の両被告に死刑、自首した川岸健治被告に無期懲役の判決を言い渡した。3 人は判決を不服として控訴したが、神田被告は同年 4 月に控訴を取り下げたため死刑が確定。2015 年 6 月に死刑が執行された。残り 2人は 12 年までに本事件での無期懲役が確定。利恵さんの母・富美子さんは事件後、日本の司法の下では被害者が 1 人の殺人事件で死刑判決が言い渡されるのはまれだと知り、被告人 3 人への極刑を求めて署名活動を展開。署名は最終的に 33 万人分に達した。(”いつかの夏”紹介文より)“
実は被害者の叔母の山本美穂子様は山内町大野出身で、山内中学校、武雄高等学校で小生の同級生だった方です。そういう縁で山内中時代の旧友達が地元でこの署名運動に関わり、茨城在住の小生にも協力を呼び掛けてきたことで、この理不尽な事件を知りました。
“いつかの夏”はこの事件を風化させまいという遺族の思いを受け止めた、気鋭のノンフィクション作家・大崎善生による渾身のレポートです。
この本は署名運動に協力した関係で小生にも配本いただいたものですが、改めて事件の全貌を知ることができました。
特に、「いつかの夏」にも描写されておりますが、山本様らが育った昭和 30 年代の平和で長閑な山内町の環境を知るだけに、そこから一転して悲惨な事件に巻き込まれた遺族の方々を思うとき、その理不尽さに怒りと涙を禁じえませんでした。
武雄高校出身の皆様にもご一読願いたいと念じる一方、ご遺族の方方のお気持ちを考え合わせると、果たして紹介した方がいいのか、迷いました。考えあぐねて山本様に問い合わせた結果、ご遺族がこの事件が風化することを危惧しておられ、是非、多様な媒体を通じて、多くの人に事件を知っていただきたいと願っておられることが分かりました。
山本様の了承を得て、東京支部ホームページで皆様に図書紹介という形でお知らせすることにした次第です。
▶︎山本さまより同意文はこちら
(2019年 3月)